東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)272号 判決
審決にこれを取り消すべき違法の点があるか否かを検討する。
まず、原告は、審決は引用商標を前半の「ゴールド」の文字と後半の「ハーフ」の文字とに分割しているが、引用商標は、構成よりみて一連一体のものであり、観念においても無意味な新造語というべきであるから、審決のいうように分割すべきでなく、「ゴールドハーフ」として一連に称呼されるとみるべきである旨主張する。
なるほど、当事者間に争いのない別紙(二)表示の引用商標をみれば、その構成は、「ゴールドハーフ」の片仮名文字をゴチツク体で一連に横書きして成るもので、各文字の大きさは同一であり、各文字の間隔も同じであるばかりでなく、文字数も長音を含めて七字にすぎないから、引用商標から「ゴールドハーフ」という一連の称呼が生ずることは否定できないところであろう。
しかしながら、引用商標の前半の「ゴールド」の文字が、英語から来た語で、「金」、「金製の」ないしは「金色の」等の意味を持つものとして、きわめて広く親しまれていること及びこれらの意味合から転じて、商品が優秀あるいは高級であることを示すために商標中に右文字が使用されることの少なくないことは、当裁判所に顕著な事実である。一方、引用商標の後半の「ハーフ」の文字は、同様英語から来た語で、「半分」等の意味を有するものであることは良く知られているとみるのが相当であるところ、これが前記指定商品の関係で通常用いられる識別性の低い文字であることを認めるに足る証拠はない。してみると、引用商標がその指定商品に用いられた場合、取引者、需要者は、これを前記のように「ゴールドハーフ」として認識し称呼するばかりでなく、優秀な「ハーフ」の製品ないし「ハーフ」中の高級品を表示するものとして認識し、「ハーフ」と称呼する場合も決して少なくないものといわなければならず、この点についての審決の認定に誤りはない。
そして、当事者間に争いのない別紙(一)の本願商標から、「ハーフ」の称呼が生ずることは明らかであるから、本願商標と引用商標とが称呼を共通にする類似の商標であるとした審決に判断を誤つた違法はない。
原告は、引用商標の登録出願人及び引用商標の審査官が、引用商標を一連一体の商標であるとする意見を有していた旨主張するが、右のような意見が前記認定を左右すべきものでないことはいうまでもないから、右主張は理由がない。
また、原告は、商品の優秀性等を示すともみられる語を付した商標が、そのまま一連一体のものとみられ、あるいは、右の語を付さないものとは類似しないとされた多くの登録、公告ないしは審決例を挙示する趣旨で書証を提出し、いずれもその成立に争いのない甲第七号証の一、二、同第八号証の一ないし三、同第一〇号証、同第一一、一二号証の各一、二及び乙第六号証の四等によれば、原告主張のような事例が認められるが、これらは、商品の優秀性等を表わすともとれる文字を他の語に付した商標であつても、その「他の語」が指定商品との関係で有する意味合や右文字と右「他の語」との結合によつて生ずる観念等、その商標の具体的構成における種々の要素によつて、一連のものとして観念、称呼されるとみられる場合があることを示すにすぎず、これらの事例があるからといつて、前記認定の妨げとなるものではないから、原告の右主張も失当である。
以上のとおりであるから、審決には、これを取り消すべき違法の点はないといわなければならない。
よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。